社会福祉HERO’S

「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」プレゼンテーターに学生ライターが会いに行った!連載④豊悠福祉会 中嶋ゆいさん『社会福祉×ファッションで町おこし、介護ってこんなに面白い』

編集部ニュース

2019.11.26

社会福祉の現場でさまざまな挑戦をしている若手スタッフたちが登壇するイベント「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」(12/10開催)に登壇する7人のプレゼンテーターに学生ライターが密着取材。その第四弾は、武蔵大学の糸井明日香さんが、社会福祉法人豊悠福祉会(大阪)で働く中嶋ゆいさんに会ってきました。

糸井明日香さん

1998年京都生まれ、東京育ち。武蔵大学社会学部3年。大学ではメディア社会学を専攻。なんでも自分の目で見ること、自分でやってみることが信念。社会福祉の未来を切り開くクリエイティブな現場を見てみたいとソーシャルステイに参加。

ファッションショーの企画に込めた想いを語る中嶋さん(左)を取材する糸井さん

社会福祉とファッション、この二つの言葉を聞いて、何を思い浮かべますか?この二つの言葉は、普通なら結びつかないものかもしれません。しかし、老人ホームの入居者をモデルにしたファッションショーを開催した社会福祉法人があります。社会福祉の現場は私たちが想像するよりずっとクリエイティブ。大阪の小さな町で挑戦を続けるヒーローに話を聞きました。(糸井 明日香)

利用者をモデルにファッションショーを開催

大阪にある人口2万人弱の町、豊能町。この町にある社会福祉法人豊悠福祉会は、支援を必要とする高齢者や障がい者が通ったり、集まったり、暮らしたりできる場をつくることに注力してきました。

利用者の方と会話する中嶋さん(右)

今年6月には、この町で最大規模のホールを会場にしたファッションショーを開催。法人が経営する特別養護老人ホーム「祥雲館」の利用者や地域住民がモデルとなって、思い思いのファッションを舞台上で披露しました。利用者の家族や地域住民、学生など330人を動員し、当日は大盛況。地域が一体となるイベントとなりました。

町で最大規模のホール「ユーベルホール」でファッションショーを開催

「普段、特別養護老人ホームのような福祉施設には、利用者の家族や関係者しか立ち寄ってもらえず、暗いイメージがあるかもしれません。でもそれが『ファッションショーをやるから是非来てもらえませんか?』と言うと、たくさんの人が興味をもってくれるんです。こういうきっかけから、学生さんにも社会福祉という分野に興味をもってもらえたらいいなと思います」―――そう話すのは、豊悠福祉会ユニットサブリーダーの中嶋ゆいさん(26)。

特別養護老人ホーム「祥雲館」のスタッフは総勢200人以上。中嶋さんはここで働く一人です。介護だけではなく、近年は地域住民の交流の場づくりにも力を入れており、その一環としてファッションショーを開催しました。

「開催した」とひとくちに言っても、簡単なことではありません。まずは、モデルである利用者一人ずつにヒアリングを行って採寸し、衣装のイメージをふくらませます。そして、協力者のデザイナーに衣装を提案していただき、小物なども作ってもらったりとイメージに合わせた衣装をつくります。当日までは、とくにモデルである利用者の体調に配慮しながら、ファッションショーの進行を考えます。協力してくれるスタッフや地域住民との打ち合わせも多く、さらには、当日のボランティア学生の配置や活動内容も決めなくてはいけません。「やることは尽きなかった」と中嶋さんは明かします。もちろん、この間の日々の業務がなくなるわけでもありません。

ヘトヘトになっても「やって良かった」と思えるのは、モデルの方も、その家族も、スタッフも心から喜んでくれるから。昨年から始まったファッションショーは今年で3回目の開催となりました。

最後まで願いを叶える介護のかたち

ファッションショーは、利用者さんの「願いを叶えたい」という思いと、学生に「社会福祉のおもしろさを知ってもらいたい」という二つの思いから誕生しました。
祥雲館の利用者の一人で、ファッションショーでモデルを務めた井上さんは「まさかあんな服を着せてもらえるなんてね、めったにないことですね」と、しみじみ話します。

モデルとして参加した井上さん(右)

井上さんは、今年は元号が新しくなり、おめでたい年であるということから、皇室をイメージしたピンク色のドレスを着ることにしました。

衣装を着て登壇した井上さん

「高齢者施設に入所して自分の身につけたい服を着て、ファッションショーに出るなんて、なかなかないと思います。だから、出たいって思いがちょっとでもあるなら、私は出てほしい」と中嶋さんは言います。

しかし、「こうしたい」と声を大にして言える利用者と、言えない利用者がいることはもちろん、そもそも言葉を話すことが出来ない利用者がいることも事実です。普段の生活のなかで何気なく話していることから「この人はもしかしたら、こんな思いがあるのかもしれない」と気づいたり、家族の方と相談して決めたりするなど、工夫が必要だといいます。

学生にこそ知ってほしい、介護のおもしろさ

 

「たとえば、認知症の方とコミュニケーションを図るなかで、何気ない自分のひと言がその人に響いて、利用者のほうから話しかけてくれたりすることがあるんです」

さまざまな角度から利用者の心を探り、本質の部分を知ろうと工夫すること、そしてそれが実る瞬間があること、それが介護のおもしろさの一つだと中嶋さんは言います。

「『お風呂嫌いやねん!私は入らへん!』って言う人が、その人の好きなキーワード、例えばその人の出身地の話をしていたら、喜んで話をしてくれる。『私が住んでいたところは寒くてな、牛飼っててな』ってニコニコしながらお風呂に入ってくれるんです!」

現場の中嶋さんは笑顔が絶えない

実際にファッションショーでも、「こんなの嫌、着たくない」と言っていた方や、遠慮して「出ないわよ」と言っていた方が、ステージに立ったら満面の笑みで観客に手を振っていたりもしたそうです。

「ファッションショーをやったからこそ聞けた話というのはたくさんありました。好きな色や音楽なんて、ファッションショーをやらなかったら聞いていなかったかもしれないし、そこからいろいろな話に発展して、若い頃タイピストだったという話を初めて聞けたことがあったんです。それで、『すてきですね!』『そやねん~!』と盛りあがったり。こうして、ファッションショーは日頃の介護では聞くことのない話を聞くことができたり、新たな発見があります。それが、介護のおもしろさにつながってきますね。」と中嶋さんは目を輝かせます。

「町おこし」としてのファッションショー

 

ファッションショーは、多世代の交流の場としても大きな役割を果たしています。

豊悠福祉会が平成20年に新しい事業所を作った際、周辺住民は老人ホームに対して懐疑的で、地域とのあつれきが生じていたそうです。しかし、自治会への参加などを通して地域の困りごとを一緒に解決していくなかで、住民にも徐々に理解してもらえるようになり、それが現在まで町おこし事業として続いてきました。

ファッションショーは祥雲館の利用者以外の地域住民からもモデルを募ったり、子どもたちのダンスを演目に組み込んだりなど、地域のさまざまな世代が集う場所になるように企画されています。また、運営面でも地域のボランティアや企業と協力していて、地域を巻き込んだイベントづくりを実現しているといいます。

施設の近くにあるホームページの制作会社「大学堂株式会社」での打ち合わせ

ファッションショーは手段でしかない

 

地域に愛され、地域と共に開催したファッションショーですが、中嶋さんは、「ファッションショーは手段でしかない」と言いいます。

「今はファッションショーが真新しいもので、みなさんが興味をもってくださっているので、アイデアがある限りは続けたいと思っていますが、ファッションショーだから良い、ということではありません。それに代わるものがあるのであれば、どんどん実行していきたいです」

中嶋さんが大切にしているのは、祥雲館の入居者も、子どもたちも、地域住民も、さまざまな世代の人が集まる場をつくる、ということ。

「理想の形を追求するために、日々考えていかないといけないと思っています。みなさんに『おもしろい』『楽しい』『また行きたい』と思ってもらえるアイデアを常に出し続け、これからも地域のつながりの場を私たちが作っていけたらな、と思っています」と中嶋さんは話します。

今回取材した中嶋ゆいさんが登壇!

12/10(tue)東京渋谷ストリームで開催!「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」

☆☆詳細・観覧お申し込みはこちらから☆☆

http://www.shafuku-heros.com/news/event2019-3/

 

*この記事は、(株)社会の広告社とオルタナSが実施した企画「ソーシャルステイ」に参加した大学生が執筆しました。ソーシャルステイではソーシャルイシューの現場を大学生に体感してもらい、記事を通して発信してもらいます。

 

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