社会福祉HERO’S

「社会福祉HERO’STOKYO2019」プレゼンテーターに学生ライターが会いに行った! 連載②保育士 福島里菜さん『スマートな働き方で、保育士も親子もハッピーに』

編集部ニュース

2019.11.22

社会福祉の現場でさまざまな挑戦をしている若手スタッフたちが登壇するイベント「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」(12/10開催)に登壇する7人のプレゼンテーターに学生ライターが密着取材。その第二弾は、明治大学の多田野豪さん。社会福祉法人江東会 西区南堀江保育園てのひら(大阪府)の保育士・福島里菜さんに会ってきました。

 

多田野 豪さん

1996年千葉県生まれ。明治大学 経営学部公共経営学科4年。大学を1年間休学し、フィリピンとオーストラリアでの語学留学を経験。興味・関心事項は、環境問題やCSR。ソーシャルステイに応募したのは、実際に現場を見ることで、社会福祉のリアルを知れると思ったから。

福島さん(左)の取材をする多田野さん

保育園と聞くと、仕事量の多さから、過酷な職場だと思われる方が多いのではないでしょうか?しかし、そんなイメージを大きく変える保育園があります。働き方改革によって、職員、子ども、保護者、全員が幸せになる。そんな保育園を現場で支える、一人の女性保育士に話を聞きました。(多田野 豪)

西区南堀江保育園てのひらの保育士・福島里菜さん

大阪府を拠点に活動する社会福祉法人江東会。3つの保育園を経営しており、そのうちの一つである西区南堀江保育園てのひらは、ICT導入やボトムアップ型チームで働き方改革を実践したり、地域と盛んに交流したりすることで、職員と親子双方が居心地の良い、保育園を目指しています。

「働きやすい環境が構築されることで、園児や保護者とより良い関係を築けると思います。それが職員のやりがいにつながると思うので、そういった保育園がもっと増えてほしいです」——そう話すのは、保育士として働く福島里菜さん(28歳)。

大阪府大阪市にある西区南堀江保育園てのひら(以下 てのひら)では、保育士、調理師、栄養士、看護師、事務員など、計19名の職員が働いており、0歳〜5歳の計73人の園児(2019年10月時点)を保育しています。

園児がいる中、パソコンで情報管理

「業務の効率化によって、職員一人ひとりの仕事に余裕ができ、それが自然といい循環に繋がっているように思います」と話すのは、福島さんの同僚で保育士の文元 善美(ふみもと よしみ)さん。

ICT導入による業務効率化

保育士の業務を複雑化している理由の一つが、情報を紙媒体で管理していることです。

「クラス日誌や連絡帳の記入、園児の体調管理など、あらゆる情報を紙媒体で記録・管理するのが一般的です。しかし、それによって、保育士の一日の業務時間が長引いてしまいます。例えば、担当のクラスの園児に発熱があった際は、そのクラスの担任の先生は、他クラスの先生を呼んで、園児たちを代わりに見てもらいます。それから事務所に移動して、保護者の連絡先を調べて、連絡をします。この手順では、電話番号の確認と保護者への連絡のために、教室から事務室へ移動する時間がかかるだけでなく、代わりでクラスを見てくれる先生も、自分の業務を後回しにしなければならなくなります」と福島さん。

紙媒体での管理は、職員間での情報共有も複雑化してしまいます。

「保育園では、何か行事を行う際、必ず日案という計画書のようなものを作成しなければなりません。園児の安全を守るために、行事当日の段取りを職員間で共有することは、非常に大事ですが、紙媒体で日案を作成すると、1枚の紙面を職員全員が確認するのは、とても難しいですし、手間がかかります」と福島さんは話します。

園児と職員の登園・降園時間を、タッチ式カードで管理

てのひらでは、ICTシステムを導入して、業務の大幅な効率化を実現しています。

「『CoDOMON(コドモン)』というICTシステムを導入したことによって、それらの情報を、パソコンとスマートフォンで管理できるようになりました。ICTの導入で、情報の入力作業や職員間での情報共有、登園・降園の管理、園児の写真販売など、さまざまな業務の効率化を図ることができました」

「例えば連絡帳は、CoDOMONのアプリに備わっている、トーク機能を利用して、保護者とメッセージでやり取りをしているので、何十冊もの連絡帳に手書きで記入するのと比べると、時間をかなり短縮できます」

「保護者からの連絡を簡単に受け取れるようになりました。従来、休みの連絡は、事務室の電話にかかってきていたので、職員が最低一人、事務室にいなければなりませんでした。アプリ導入後は、保護者がアプリを通じて知らせてくれるので、その必要がなくなりました」

ICTシステムを導入する保育園は、徐々に増えていますが、まだ多くはないのが現状です。てのひらが、どのようにICTを導入したのか聞いてみました。

「ICT導入に際して、保護者からの反対はありませんでしたが、一方で、園内職員の間で、『導入によって、温かみがなくなってしまうのでは?』といった不安の声が上がりました」

しかし、導入した結果、どの職員でも連絡帳にアクセスできるようになり、むしろ温かみのある保育が可能になりました。担当するクラス以外の園児のことについても簡単に把握することができるため、どの園児の保護者が来園された際にも、『お子さんの発熱、早く治るといいですね』『先週末は、家族旅行に行かれたんですよね?』などと、一声かけることができるようになったんです」と福島さん。

当初の不安とは打って変わって、ICTを導入したおかげで、保護者とのコミュニケーションは、以前よりも密接になったと話します。

てのひらは、「ボトムアップ型チーム」という保育園では独特な仕組みを取り入れています。これは、園長の指示で職員が動くのではなく、職員で構成されたチームが考えたアイデアを園長に提案する仕組みです。

「職員チーム・災害チーム・地域チーム・園内安全チーム・保護者チームの5つに分かれています。各チームは、3人〜4人の職員で構成されていて、1か月に1度の会議で、チームごとにアイデアを考案し、その提案によりさまざまなことが決定します。職員が誕生日に休める制度や、1週間の特別休暇を取得できる制度などが、職員の声から生まれました」

「保護者チーム」の会議の様子。家庭への絵本の貸し出しについて議論

会議のやり方も工夫していました。取材当日、保護者チームの会議の様子をうかがいました。議題は、「家庭への絵本の貸し出し」について。受付の方法や絵本の置き場所などについて議論されていました。

「話し合いをする際、終わる時間を決めないと、話が脱線して、結局話がまとまらないことってありますよね。なので、てのひらの会議は、「30分以内」と決まっています。話がまとまりきらないことはありますが、それぞれが時間を意識し、効果的・効率的に議論できているという実感があります」と話すのは、保護者チームを担当する保育士の吉田弘美さん。

当日の会議は、順序よく進み、見事に話がまとまっていました。

園児を見守る福島さん

福島さんに、保育士を目指すきっかけとなった出来事を、聞きました。

「両親は共働きだったので、0歳から保育園に通い、家で遊んでくれるのはおばあちゃんでした。5歳の時に、いとこが生まれて、日々接するうちに、小さい子はとても可愛いと感じたことが、子どもを好きになったきっかけだと思います。年長の時に、すごくいい担任の先生に出会ったのを機に、将来は保育士になりたいと思ったんです。それからはずっとその思いを持ち続けました」

それでも、葛藤はあったといいます。

「受験をして入った中学校では、多くの同級生が将来は医者や弁護士を目指しているような環境でした。自分の将来の夢を、周りの友達に話せず、将来の夢を作文にするという夏休みの宿題でしか書けませんでした。いまなら、自信を持って言えるのですが、当時は多感な時期だったこともあり、プライドが邪魔したのかもしれないです」と福島さんは当時を振り返ります。

実際に、保育士になるという夢を叶え、「園児たちは、普段親御さんと過ごす時間より、保育園の先生と過ごす時間の方が長いんです。日々の成長を見守れるのがやりがいですし、園児たちに自然と愛着が湧きます」と、日々の仕事にやりがいを感じていると話します。

てのひらで、印象に残っているエピソードについて、福島さんに聞いてみました。

「クラスを担当していると、年度末の個人懇談の際に、保護者の方から『先生、来年もよろしくね』と言われることがよくあります。もちろん、信頼してもらえているということは、喜ばしいことなのですが、他の保育士による保育に対し、不安感を抱いてしまうことも想定されます。そんな中で最近、ある保護者さんが『てのひらが好き』と言ってくれたことがあります。その時は、てのひらが良い方向に進んでいると実感しました」

「もっと多くの方に、園としての『てのひら』を好きになってもらうためには、どの職員でも高い水準で保育を提供できるようにしなければならないと思っています。なので、これまで以上に、若手職員のスキルアップに注力したいです」

ICTシステムの導入や、ボトムアップでの運営など、最先端の保育に取り組んできた「てのひら」を保育士として支える福島さん。「これからも、『全員で保育する』を実践し、職員・保護者・園児の全員が、幸せになれるような保育園にしたいと思います」と話します。

今回取材した福島さんが登壇!12/10(tue)東京渋谷ストリームで開催!「社会福祉HERO’S TOKYO 2019!」

☆☆詳細・申し込みはこちらから☆☆
http://www.shafuku-heros.com/news/event2019-3/

 

*この記事は、(株)社会の広告社とオルタナSが実施した企画「ソーシャルステイ」に参加した大学生が執筆しました。ソーシャルステイではソーシャルイシューの現場を大学生に体感してもらい、記事を通して発信してもらいます。

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